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東京高等裁判所 昭和24年(新を)2453号 判決 1950年12月25日

被告人

山田永漢

主文

原判決を破棄する。

本件を長野地方裁判所上田支部に差し戻す。

理由

弁護人林百郎控訴趣意第二点について。

差押を受けた自己の物を損壊するときは、告訴なくして毀棄罪の公訴ができることは刑法の規定(刑法第二百六十二条、第二百六十四条参照)に照らし明白ではあるが、刑法第二百六十一条の毀棄罪について公訴を提起するについては、その前提として、被害者の告訴あるを要し、その告訴権者は毀棄された物の所有者に限るべきことは、大審院判決の夙に明示するところである。これを本件について考察するのに、原判示差押物件が少くとも告訴人たる上田税務署竹田一郎の所有に属するものでないことは明白である。而して記録上、右物件が被告人の所有に属するものであることの窺いうるものがないのみならず、他に所有者として告訴した者のあるを認め得ないから、原審は被害者の告訴はなきに拘わらず、被告人に対する不適法な毀棄罪の公訴に基づき敢てその実体につきこれを審判した違法あるに帰し、この違法は原判決に影響を及ぼすべきことが明白であるから、この点において原判決は到底破棄を免れない。

よつて所論は窮極において理由があるから、余の控訴趣意についての判断を省略し、刑事訴訟法第三百九十七条に則り、原判決を破棄し、同法第四百条本文前段に従い本件を長野地方裁判所上田支部に差し戻すこととする。

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